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主張2011

2011年の主張

主張 2011年12月5日

きょうされんが下記の意見を表明していますので紹介します。

2011年12月5日

「骨格提言」こそ障害者施策の骨太方針!

かけがえのない「骨格提言」の価値
 8月30日に障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会がまとめた『障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言-新法の制定を目指して-』(以下「骨格提言」)が発表されてから3カ月が経過した。
 この間、この「骨格提言」をベースとした障害者総合福祉法の制定を求める意見が、障害団体や自治体から表明されてきている。このことは、障害者自立支援法の廃止を訴え、障害者自立支援法違憲訴訟を支え、そして政権交代を受けて、制度改革をすすめてきたわたしたちの運動の成果であることに間違いはない。
 この「骨格提言」の意義と解釈については、「月刊きょうされんニュースTOMO」11月号をぜひとも参照願いたいが、ポイントは以下の諸点である。

  まず第一に、我が国の障害者福祉制度史上、初めて当事者が主体となり、障害の種別を超え、法律を共同で創るという、歴史的画期がこの「骨格提言」に込められている。
  第二に、障害者権利条約と自立支援法違憲訴訟基本合意という二つの指針が、総合福祉部会のゆるぎない結論を導き出したことである。
  第三には、この「骨格提言」を、現実の法案として結実させるために、この秋から来春にかけての運動課題を明確に示したことである。

  今回の「骨格提言」に限らず、前段の障害者基本法の改正に向けた検討の過程でも、厚生労働省は推進会議の意見に対して消極的姿勢を露わにし、それは制度改革そのものへの否定とも受け取れるほどに、挑発的なものであった。
 しかし、そうした牽制に対して、ぶれることなく、部会としての合意を「骨格提言」としてかたちにできたことで、まずは障害者自立支援法を廃止し、新法を創る第一段階を何とか乗り越えられたといえよう。
 もちろん、「骨格提言」の内容がすべて百点満点とは評価できないが、障害者権利条約の批准に向けての第一ハードルを越えたとみて良い。
  5年という改革期間が設定され、その第一段階としての障害者基本法の改定が本年7月であった。それに続き、改革の前半の「山」といえるのが、この障害者総合福祉法の制定である。

  この「骨格提言」は、推進会議の手を離れ、現在は法案策定作業が進められている。何としても、「骨格提言」の趣旨を損ねずに、障害者総合福祉法が実現するよう、監視と運動の手を緩めずにいこうではないか。

日本型社会支援雇用制度の夜明けを
 「骨格提言」では、障害者の労働施策について、賃金補填施策の実施など、いわゆる社会支援雇用制度の確立に向けた検討を提言している。これは、わたしたちきょうされんが示した政策提言とも基本的な方向性は一致しており、大いに歓迎したい。

  但し、財源問題を中心に、その政策実現への途はそう容易(たやす)いものではない。
 しかし、「天下り先法人で仕事もろくにしないで多額の賃金と退職金を二重に受け取っているのは、すでに国家による立派な賃金補填ではないか」とは、障害のある仲間たちの声である。

  「26,000人の国家公務員OBが4,700の法人に天下りし、そして、年間に12兆6,000億円もの血税が流れている。このカラクリを壊さない限り、どんな予算を組んでも経済危機を乗り切ることはできない」
 これは野田佳彦首相が自らの著書『民主の敵―政権交代に大義あり』(新潮社、2009年7月)で著した見解である。
 天下りに血税を投入することと、障害者の福祉と雇用に思い切った予算を配分することと、どちらが社会保障にとって有益な財政構造かと問えば、結論ははっきりしている。むろん後者である。

  要は、「骨格提言」を新法として実現できるか否かは、制度を支える財政のあり方なのだ。

障害関連施設は儲けているのか
 去る11月13日、NHKニュースで「障害者施設、多くが黒字経営に」との見出しで、厚生労働省の調査の結果、「2年前に報酬が引き上げられたことで、経営が赤字だった事業者の多くが黒字になった」との報道が流れた。
  この調査とは、「2011年度障害福祉サービス等経営実態調査」であるが、その概要は、全体の収支差率は9.7%で、2008年度の前回調査(6.1%)から3.6ポイント伸長し、介護給付の個別サービスでは、居宅介護(16.1%、前回はマイナス7.9%、以下同)、生活介護(12.2%、6.6%)などで改善された一方、短期入所(7.5%、9.6%)などでは悪化していたというものである。

  これは、11月11日より開始された2012年度の障害福祉サービスの報酬改定に向けた議論をすすめる「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」(主査=津田弥太郎政務官)の会合で、厚生労働省から公表されたものである。
 内閣が年末の予算編成過程で決める改定率を踏まえ、2012年1月をめどに障害福祉サービス事業ごとの報酬を設定し、その結果を厚労相が告示する予定であるために、まるで障害福祉サービス事業者が、福祉事業で儲けているとの印象を国民に与えかねないような、意図的な公表の仕方ではないのか。つまり、「福祉施設は儲けているのだから、報酬はこれ以上引き上げる必要がない」ということを、世論操作もしながら暗に示しているとしか思えないのである。

  社会福祉事業といえども、経営組織である以上、赤字ではなく黒字で決算する努力をするのは当たり前である。先行きの不透明な我が国の政治経済動向のなかで、とくに障害者自 立支援法の施行(2006年)以降、設備整備費補助など公的な財政負担が削減されてきている限り、計画的な引当金繰入などを算定するのはごく当たり前の経営の姿であり、それは何よりも障害者の権利を守るための積極的な経営のありようであると考える。

  そして、その背景には、職員の賃金引下げや引き続く非正規化によって、どうにか経営を乗り切っているのが多くの実態であり、ことさら収支差率だけを取り出し、ワーキングプア化してきている福祉労働者の実態を無視した乱暴な報道だと、多くの関係者が気づいたことであろう。

  こうした情勢の下でスタートしたきょうされん第35次国会請願署名・募金運動は、まさに 「骨格提言」の実現とそのための財政に裏打ちされた障害者総合福祉法の制定を求める一大キャンペーンである。ぜひとも多くの国民のみなさんに訴え、広げよう。

主張 2011年11月14日

きょうされんが下記の意見を表明していますので紹介します。

2011年11月14日

障害福祉サービス等報酬改定についての意見

きょうされん

理事長 西村 直

平素より障害福祉の向上にご尽力賜り、心よりお礼申し上げます。さて表記の件について、以下の通り当会の意見を申し上げます。
政府は、2010年6月の閣議において、障がい者制度改革の工程表を決定し、2012年(平成24年)の通常国会に障害者自立支援法(以下、自立支援法)の廃止に伴う新たな法制度の提案を決定しました。この閣議決定にもとづいて、内閣府・障がい者制度改革推進会議のもとに総合福祉部会が設置され、2011年8月30日に「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」が策定されました(以下、「骨格提言」とする)。
本「骨格提言」は、9月26日に開催された第35回障がい者制度改革推進会議において承認され、蓮舫特命担当大臣に直接手渡し、障がい者制度改革推進本部における検討に委ねられました。
また、自立支援法の廃止と新法の制定は、2010年1月7日に、自立支援法違憲訴訟団と国(厚生労働省)の交わした「基本合意文書」に明記された公的な確定事項であり、さらに、この「基本合意文書」にもとづいて、同訴訟は和解調書を交わしました。つまり、自立支援法の廃止は、司法による結論でもあります。
すなわち次期通常国会には、司法の結論を遵守し、自立支援法の廃止と「骨格提言」をもとにした法案が上程されることになります。こうした経過を踏まえるならば、2012年度の報酬改定については、「骨格提言」の「報酬と人材確保」の内容の具体化を図っていく観点から検討されるべきであり、当会としては、少なくとも以下の4点について今般の見直しは不可欠であると考えます。
1、 報酬の支払い方式は、原則月払い方式とすること。
2、 人員基準の常勤換算方式を廃止すること。
3、 基本報酬によって、支援体制の安定と継続性を確保することができる報酬体系と水準にすること。その際、現在の報酬加算(経過措置を含む)は、基本報酬に含めるべきである。また、福祉・介護人材の処遇改善事業や障害者自立支援対策臨時特例交付金による特別対策事業も継続し、基本報酬に含めること。
4、 地域活動支援センターの低額な補助水準を改善するために、政府の一括交付金を引き上げるとともに、自治体間格差の解消を図ること。
(問い合わせ先)
きょうされん
担当:事務局長 多田 薫
Tel:03-5385-2223
Fax:03-5385-2299
E-mail:zenkoku@kyosaren.or.jp

主張 2011年9月1日

きょうされんが下記の意見を表明していますので紹介します。

2011年9月1日

「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」

取りまとめにあたっての声明
8月30日、障がい者制度改革推進会議第18回総合福祉部会において、「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(以下、骨格提言)が取りまとめられた。2010年4月の同部会発足以来、55人の部会員による真摯な討議を通じ、その総意をもってこの骨格提言が取りまとめられたことに、きょうされんとして部会員をはじめとする関係各位の多大な尽力に心より敬意を表するものである。
きょうされんは、今後の法案作成過程において、この骨格提言の内容が全面的に実現されるよう強く要望する。
骨格提言では、2006年12月に国連が採択した「障害者権利条約」と、2010年1月に国(厚生労働省)と障害者自立支援法違憲訴訟原告らとの間で結ばれた「基本合意文書」をベースとして、自立支援法廃止後の総合福祉法がめざすものとして、障害のない市民との平等と公平、谷間や空白の解消、格差の是正など6つの点をかかげた。
さらに総合福祉法の理念・目的において憲法等に基づく基本的人権の行使を支援することを確認し、支援の対象から排除されることのない障害(者)の範囲をはじめ、障害程度区分の廃止と新たな支給決定の仕組み、利用料負担における応益負担との決別や報酬制度の日額・月額払いの統合案が組み込まれた。また、当会結成以来の主要課題である地域活動支援センターを含む小規模作業所問題の解決に向けた方向性が、就労・日中活動支援体系の改編を通して示された。さらに地域生活の資源整備等、当会が政策提言や要望書等でかねてから提起してきた内容が採り入れられたこと等を大きく評価する。
他方、積み残された課題も多くある。とくに労働・雇用分野や、精神障害者の社会的入院問題を含む医療問題等、関連する他の法律や分野との関係の調整や連携が十分進んでいない等である。これらの課題を放置しないためにも、今後の法案づくりおよび法案成立に向けて、総合福祉部会を残してその経過をチェックし骨格提言の水準が堅持できるようにしていくことが肝要である。
野田佳彦新首相には、障がい者制度改革推進本部長として、新たな厚生労働大臣とともに、この骨格提言に即した総合福祉法の制定への強力なリーダーシップを採られることを期待する。
きょうされんは、日本障害フォーラムに参加する障害関係団体とも連携して、骨格提言をふまえた総合福祉法の実現にむけて全国各地で積極的に運動を押し進めていく決意である。
2011年9月1日
きょうされん常任理事会

主張 2011年6月27日

きょうされんが下記の意見を表明していますので紹介します。

2011年6月27日

障害者基本法の改正と急浮上した障害者虐待防止法をどう読む?

推進会議は政策委員会に?
 障害者基本法改正案が6月16日、とにもかくにも、さまざまな問題を含みつつ、衆議院で可決した。今後は参議院で審議され、今国会で成立の見込みである。
 本法改正案については、直前までゴタゴタした。ひとつだけ例を挙げよう。
第2条(定義)で、「障害者」の定義のうち、「精神障害(発達障害を含む。)」と、発達障害が精神障害に含まれたのである。
 精神保健福祉法第5条(定義)では
 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。
 とある。
 一方で、発達障害者支援法第2条(定義)では、
 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
 とあるのだ。精神障害者の「その他の精神疾患」に発達障害を含めるという意味のようだが、余計にややこしいことになった。
 わざわざ、この両法の規定を無視し、他にも法の谷間に置かれている難病や高次脳機能障害など、いくつもの障害を差し置いて、あまりにも無理やりに、障害の種別を制限列挙するのは、法律云々よりも、政府・与野党間の何か取り引きや思惑でもあったのかと勘繰りたくなる。
 とくに障害の定義は、わが国の障害者施策の根幹をなす大切な事項であり、こうした判断は、後々に禍根を残すことは明らか。障害者制度改革推進会議(以下「推進会議」。)では、このような結論は導かれていないのだ。
 せいぜい、言語に(手話を含む。)と規定したことや、障害者政策委員会が設置され、推進会議が発展的に解消し法的根拠をもつ可能性が出てきたことが、せめてもの救いか。
病院では虐待の心配がない?
 ところで、寝耳に水の如く、障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)が急浮上し、6月17日、一気に可決・成立した。来年10月より施行される見込みだ。
 しかし、本法も問題点が実に多い。例えば、何より虐待行為者の範囲があまりにも狭く、養護者と障害者施設及び企業などに限定していることだ。かの「宇都宮病院事件」を知る人なら、なぜ精神科病院がその対象にならないのか、まさに大欠陥法だと直感するであろう。また、学校も対象外となっている。これらについては今後の検討課題としているが、これとて推進会議の意見を訊かずに拙速に成立させてしまったことは、後々に問題を残した。なお、本法は議員立法として提案されたが、その陰では、民主・自民・公明の3党による他法とのかけ引きがあったとも聞いた。
 虐待防止法の必要性は否定しないが、2014年までの制度改革期間を通して、実態を把握し、他の関連法との整合性を踏まえて制定すべきであった。施行わずか3年後の見直しが規定されたことは、如実にその問題をあらわしている。
舞台はいよいよ総合福祉法へ
 それにしても、障害者基本法、あるいはこの障害者虐待防止法にしてもしかりである。国会という国権の最高機関である公の場でまともな調査や審議もほとんど抜きに可決あるいは成立させるというのは、法案の賛否はともかくとして民主主義の府にあまりにも相応しくない。国会の形骸化に手を貸すような政党や議員には反省を求めたい。
 さて、いよいよ障害者自立支援法に別れを告げ、とびっきりの新法・障害者総合福祉法への期待が高まってきている。この6月には、推進会議・総合福祉部会の第2期作業チームによる報告書がまとめられた。
 関心の高い「就労合同作業チーム」の報告では、就労系事業には原則として労働法を適用し、利用者負担は廃止。そして、法定雇用率と納付金制度の見直し、賃金補填を含む社会支援雇用の試行事業を実施することなどが提起されている。
 今後は、8月上旬の最終案のまとめまで、総合福祉部会はカウントダウンの段階を迎えるのだ。
 一筋縄では決して行くまい。
 情勢から目を離さず、きょうされんが5月に提起した第2次政策提言と併せて、全国で政策動向をしっかりと学んでわたしたちも実現への声をあげていこうではないか。

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